The Merchant of Veniceは、Shakespeare喜劇の代表作として、長い間全世界の観客や読者をひきつけてきた作品である。ただ、この作品は単なる喜劇として片づけることができないとされていることも事実で、それは宗教間の争いや社会的差別による人権問題が色濃く描かれているからである。
この作品の中で焦点になるのが、キリスト教とユダヤ教、そしてクリスチャンとユダヤ人の対立である。主人公のAntonioは「いい人でない」という評判を聞いたことがないくらい、善人の中の善人とされている。多くの船を所有する大商人で、お金を貸して利益を得ることは、キリスト教の教えに背くからといって、困窮者がいれば無利子無担保で貸す紳士である。他方もう一人の主人公であるShylockは、ユダヤ人の金貸し業を営み、高利で金を貸す金第一主義の男であったから、皆から疎まれ嫌われる存在であった。第一、一人娘のJessicaが、Shylockの家は喜びのかけらも見つけられないような‘hell’であると嘆き、実父の命の次に大切な金と高価な宝石を持ち出し、宿敵クリスチャンの恋人Lorenzoのもとに逃げ出してし...