明治、大正、昭和の文学の特質を、それぞれの時代の特性をふまえつつ、下記の各文学思潮を例にして具体的に説明せよ。〈写実主義・擬古典主義・浪漫主義・自然主義・余裕派(高踏派)・耽美派・白樺派・新思潮派・プロレタリア文学・モダニズムの文学〉
『明治、大正、昭和の文学の特質を、それぞれの時代の特性をふまえつつ、下記の各文学思潮を例にして具体的に説明せよ。〈写実主義・擬古典主義・浪漫主義・自然主義・余裕派(高踏派)・耽美派・白樺派・新思潮派・プロレタリア文学・モダニズムの文学〉』
明治二〇年前後、坪内逍遙が英文学の教養を基に『小説神髄』を書き、ここから西欧近代の実情に照らした新文学を創始する動きが現れた。戯作調を残しつつも勧善懲悪的文学観を排し、世態人情の写実を追求したのである。ここに二葉亭四迷がロシア文学の知識を基にリアリズムを説き、言文一致体によって『浮雲』を書いた。これによって近代知識人の苦悩を行き届いた心理描写で描き、近代的人間像を定着させたのである。これが真の近代文学の起点ともいえる。
しかし欧化主義への反動から、西鶴らの江戸文学に帰れとする、擬古典主義が生まれる。代表的な人物に尾崎紅葉を中心とする、山田美妙や巌谷小波といった、同人誌「我楽多文庫」を拠点とする硯友社の面々、そして幸田露伴がいる。紅葉は『金色夜叉』において雅俗折衷体と呼ばれる文体を駆使している。露伴は特に『風流仏』『五十塔』で深い東洋的知性に基づく理...