憲法問題・答案 共犯者の自白
問 共犯事件における共犯者の自白は、被告人本人との関係において補強証拠を必要とするのか、自白の証拠能力及び証明力に関する憲法上の論点を挙げて述べなさい。
1 自白の意義
自白とは、自己の犯罪事実の全部又はその重要部分を認める供述をいう。憲法は、
何人も自己に不利益な供述を強要されないという供述拒否権を保障しており、よって
当然、自白を強要することは禁止される。
2 自白の証拠能力の制限
憲法は、強制や拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く拘束された後の自白等
任意性に疑いのある自白の証拠能力を否定する。このことは、自白の強要禁止を担保
するとともに、違法な捜査を抑止することを趣旨とする。
3 自白の証明力の制限
憲法は、自白を唯一の証拠として有罪とすることを禁止し、自白の証明力に制限を与えている。これは、自白は反対尋問を経ないにもかかわらず証拠能力が認められること
との関係で、虚偽の自白による誤判を防止するとともに、自白の強要禁止を担保することを趣旨とする。
この自白の証明力の制限によって自白の真実性を担保するための補強証拠が必要とされることになる。
4 設問の検討
共犯者が自白した場合、本人を有罪とするためにはやはり補強証拠を必要とするのか
それとも補強証拠は不要でその供述のみを証拠として有罪となし得るのかについては
争いがある。
この点、補強証拠必要説は、もし補強証拠が不要であるとすれば、自白以外に証拠が無い場合、自白をした共犯者は有罪とすることができないにもかかわらず、否認した被告本人は共犯者の自白のみにより有罪とされることになり、不合理であるとする。
これに対し、補強証拠説不要説は、共犯者は被告人本人ではないから、被告人側は共犯者の供述に対して反対尋問を行うことも可能でありを行うことも可能であり、被告人本人の自白よりも証明力が強いのは当然であるとし、自白した共犯者が無罪、否認した
被告人が有罪となることは不合理でないとする。判例も不要説に立ち、共犯者であっても被告人本人との関係では被告人以外の者であり、その供述は、自由心証に任されるべきものであって、共犯者の自白を証拠に有罪とすることは違法ではないとする。