王昌齢の『塞下曲』について、先行研究の解釈を踏まえつつ、語の典故・当時の用例といったものを丁寧に調べ、また詩の構造的な問題に着目し検証することで得られた新たな解釈を提示したいと思う。その解釈というのは、いたずらに奇をてらったものではない。作者の来歴などといった外的なものに頼るのみならず、詩をテクストとして捉え、一語一語綿密に見、構造を丁寧に追うことで得られた、科学的な解釈なのである。
王昌齢の『塞下曲』を読む テクストとしての視点
一、はじめに
この詩は、唐代の詩人、王昌齢がうたった辺塞詩において最も優れるうちの一つに数えられる。『唐詩三百首』にも収められており、有名なものであるが、従来の註釈・解釈は表面の問題にとどまり、その真髄を解き明かすことをしなかった。すなわち、いかにすぐれた辺塞詩であるかということを納得させるようなものではなく、いわば不十分であったのだ。
そこで、ここでは先行研究の解釈を踏まえつつ、語の典故・当時の用例といったものを丁寧に調べ、また詩の構造的な問題に着目し検証することで得られた新たな解釈を提示したいと思う。その解釈というのは、いたずらに奇をてらったものではない。作者の来歴などといった外的なものに頼るのみならず、詩をテクストとして捉え、一語一語綿密に見、構造を丁寧に追うことで得られた、科学的な解釈なのである。
なお、解釈だけではなく、平仄、訓読、拼音(ピンイン)、語註、口語訳などを丁寧に添えたので、この資料は広く一般に受け容れられることとなると思う。この詩の真髄を堪能されんことを心から願ってやまない。
二、本編
塞下曲 王昌齡
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