日本映画に関する研究は,日本のみならず世界においても活発であり,数多くの優れた,内容として興味深い論文が発表されているにもかかわらず,外国語であるせいか敬遠され,また映画という特殊な分野であるためにその翻訳も十分に行われていない。そこで,ここではある優れた論文の抄訳(簡単な紹介)を行おうと思う。
黒澤映画『七人の侍』と六人の女性
1.はじめに
日本映画に関する研究は,日本のみならず世界においても活発であり,数多
くの優れた,内容として興味深い論文が発表されているにもかかわらず,外国
語であるせいか敬遠され,また映画という特殊な分野であるためにその翻訳も
十分に行われていない。そこで,ここではある優れた論文の抄訳(簡単な紹介)
を行おうと思う。
黒澤明の『七人の侍』はよく知られている日本映画の一つである。
「侍や百姓
たちは一面的ではなく、特に百姓たちは善悪や強弱を併せ持った存在として描
かれ、侍たちと百姓たちが相互にかかわりあい変化してゆく様がしっかりと描
かれている」
(wikipedia)という点での評価がしばしばなされ,
「侍や百姓」に
焦点をあてた論文は非常に数多くある。しかし,実はこの映画では「脇役」と
見られがちな女性たちこそが物語の進行に大きく寄与している。だが,このこ
とに注目した論文はほぼ皆無に等しい。ここで取り上げる論文は,そういった
女性たちの役割に光を当てた傑作である。以下,筆者が行ったその抄訳を掲載
する。
2.抄訳
『七人の侍』は,最も分析され...