昨今,新古典派経済学的資本主義が綻びをみせる中,マルクス経済学への関心が再び高まり,『資本論』に関心をもつ者は日に増して増えている。しかしながら,その難解さから実際に読むということが敬遠され,『資本論』について誤った俗説が人口に膾炙してしまっているのは,見るに耐えない状況である。そこで,ここでは一先ず『資本論』の大前提となっているということができる『資本論』における価値説について簡潔にまとめ,その考察をしようと思う。
『資本論』を読み解く――マルクス『資本論』における(労働)価値説
1.はじめに
昨今,新古典派経済学的資本主義が綻びをみせる中,マルクス経済学への関
心が再び高まり,
『資本論』に関心をもつ者は日に増して増えている。しかしな
がら,その難解さから実際に読むということが敬遠され,
『資本論』について誤
った俗説が人口に膾炙してしまっているのは,見るに耐えない状況である。そ
こで,ここでは一先ず『資本論』の大前提となっているということができる『資
本論』における価値説について簡潔にまとめ,その考察をしようと思う。
もっとも,現代では経済学界において労働価値説を理論の核とする学者はい
まや少数派となり,限界効用理論が主流派を占めているのは周知の通りである。
しかし,
『資本論』を理解するに当たってはそこで展開されている価値説を理解
することが何よりも肝要であり,理解が不十分であれば『資本論』を大きく読
み誤る可能性がきわめて高い。
2.3つの価値
マルクスによれば,商品に含まれている価値は次の3つに分類されるという。
⑴ 使用価値
⑵ 交換価値
⑶ 価値
以下,それぞれについて検討す...