老年看護の原則
A 個別性の尊重
高齢者は社会と個人の歴史を背負った存在であり、高齢者のものの考え方や価値観は千差万別である。たとえ同じような状態にあったとしても、一人ひとりの顔が違うように、一人ひとりが歩んできた人生は異なつている。そのため、一人ひとりの高齢者には、強い個別性が刻まれているのである。したがって、高齢者を一つの固定した観念でとらえるのではなく、一人ひとりの高齢者の個別性を把握し、長い人生の歩みのなかで培ってきた価値観や生活様式、生活習慣、文化的背景をよく知ったうえで、それらに配慮した看護方法を選択しなくてはならない。
人間の生活行為は、その人が生きてきた社会や家庭の文化的背景や生活習慣の影響を受けてなされるものである。そのため、生活行為の仕方や方法は、一人ひとり異なったものである。周囲からみた場合、不合理に思われる方法であっても、本人にとっては、今までの生活習慣から形成された合理性のあるものなのである。
自らの価値観や文化的背景、生活習慣のなかで選択されてきた方法を、第三者が勝手に修正することはすべきではない。医療従事者の都合などで、そのようなことがなされるならば、高齢...