下痢
1 症状が生じる病態生理
1.下痢とは
「下痢は,1日の糞便中の水分量が200mℓ以上(または,糞便の重はが200g/日以上)」と定義されている。
つまり,糞便中に水分量が増加し,正常な固形状態ではなくなり,水様ないし泥状となった状態であり,通常排便回数は増加する。
成人の1日に消化管に入ってくる水分の量は,合計9000mℓとなる。一方,水分の吸収は,小腸で7700mℓ,大腸で1200mℓとなり合計8900mℓ吸収される。その残りの100mℓ(100~200mℓ)が糞便中に含まれるとされる[表1]。
2.下痢のメカニズム
下痢はその発生機序により次の五つに分類される[表2,表3]。
1)腸粘膜の吸収障害(浸逓圧性下痢)
原因として,
①老化や低栄養状態により腸粘膜の萎縮が起こる場合や短腸症候群や腸管バイパス術によって腸管の吸収面積が減少する場合
②塩類下剤やマグネシウム含有の制酸剤など本来腸管から吸収されにくい薬物の服用
③乳糖不耐症など消化酵素の欠乏
④胃切除により消化される前に食物や水分が急速に小腸に流入(ダンピング症候群)
などがあげられる。
これらの何らかの原因で腸粘膜か...