胸痛
1 症状が生じる病態生理
1.胸痛とは
胸部(皮膚から胸腔内組織・臓器)に感じられる痛みの総称である.
胸痛には,さまざまな痛みの種類(不快感や圧迫感,絞扼感,灼熱感)と程度(軽症,激痛)がある.
胸痛の発生は,由来(表在性,深部性,心因性)によって,また,部位によってさまざまである.胸痛を感じる部位は,胸部以外の頸部,背部,肩,上腕部などに及ぶことがある.
胸痛を起こす病変部位は多岐にわたり,痛覚の伝導系路が複雑なため,原因疾患を特定することが難しい場合が多い.
2.胸痛の起こるメカニズム
胸痛は由来や部位により,発生のメカニズムが異なる.
表在性の胸痛
1)乳腺炎
乳腺炎は乳腺の炎症によって痛みを生じる.また,乳がんでも痛みを生じる.しばしば,炎症性の発熱を伴う.
2)外傷,感染症
外傷や皮膚の感染症などによって,胸痛が生じる.しばしば,炎症性の発熱を伴う.
深部性の胸痛
1)心臓からの胸痛
虚血による心筋の障害や酸素欠乏状態は,痛みを誘発する化学物資(発痛物質)を蓄積し,疼痛を引き起こすことが知られている.発痛物質とは,乳酸,ブラジキニン,プロスタグランジン,ヒスタミン,サ...