論証:手続法違反が処分の違法性をもたらす場合
処分の手続が、行政手続法に定める義務に違反する場合、当該処分の違法を導くか。 この点、 行政手続法の規定する一定の作為義務は、処分の実体的適性を担保する趣旨で定められていると考えれば、手続に違法事由が存在しても直ちに処分が違法であるとは認められない。 しかし、 法が、
①告知・聴聞を義務付けた趣旨は、処分の相手方が反論・防御を行い自らの権利利益の手続保障を求める機会を与える点にあり、
②理由の提示(8条)を義務付けた趣旨は、行政機関の恣意を抑制する機能と、国民の争訟の便宜を図ろうとする点にあり、
③文書の閲覧(18条)を義務付けた趣旨は、行政機関の恣意を抑制する機能と、国民の争訟の便宜を図ろうとする点にあり、
④審査基準の設定・公表(5条)を義務付けた趣旨は、行政機関の処分に際した恣意的・独断的判断を防止し、国民の予測可能性を得る点にあり、
自由主義的見地から、極めて重要な手続であると認められる。 とすれば、 このような重要な作為義務に違反して処分がなされた場合、当該処分を違法としなければ、上記趣旨は没却される。 従って、 上記作為義務に違反して処分がなされた場合、当該処分の違法を導くと認められる。
問題となる作為義務に応じて①~④を使い分ける。