Ⅳ族分析

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    第Ⅳ族イオンの化合物の溶解度の差を利用して試料溶液中の第Ⅳ族イオンを分離し、個々のイオンの溶液に確認試験を行い、その結果から第Ⅳ族イオンの存在の有無を判定することを目的とする。

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    目的
    第Ⅳ族イオンの化合物の溶解度の差を利用して試料溶液中の第Ⅳ族イオンを分離し、個々のイオンの溶液に確認試験を行い、その結果から第Ⅳ族イオンの存在の有無を判定することを目的とする。
    理論
    各イオンの化合物の特性、反応の違いを利用し、一つを固相に、ほかを液相にして、分離する作業を繰り返し、目的の物質を検出する。
    手順
    1. 分属
    試料に6mol/L NH4Cl 15mL 、6mol/L NH4OH 15mlL を加えて液性を調節、その後分族試薬1mol/L Na2S 2mL を加え、ろ過した。
    2. 沈殿物CoS、ZnS、NiS、MnSの分離
       1.の沈殿物をビーカーに移し、5分ほど放置し、1mol/l HCl 15 mL を加え、沈殿を繰り返しろ液で洗いながらろ過した。
      沈殿物はA(CoS、NiSの分析)へ、ろ液はB(Mn2+、Zn2+の分析)へと続く。
    A. CoS、NiSの分析
       沈殿物を蒸発皿に移し、王水1~2 mL を加え、沈殿が解けるまでドラフト内で過熱、ろ過を行った後、ろ液を蒸発皿に移し、ドラフト内で蒸発乾固した。
      放冷後、イオン交換水15 mLを加え、溶液を5分し、それぞれ以下の操作を行った。
     
    Co2+の検出
    溶液3~5滴にアミルアルコール1~2 mL、NH4SCN小さじ1~2杯を加え、溶液の変化を観察した。
    b. Co2+の検出
    溶液1~2 mLに、重炭酸ナトリウム飽和以上、3% 過酸化水素水を加え、溶液の変化を観察した。
    Co2+の検出
    濃HCl 2~3 mL、アセトン3、4 mLを加え、溶液の変化を観察した。
    Ni2+の検出
         6mol/L NH4OH、1% ジメチルグリオキシムを加え、溶液の変化を観察した。
    B. Mn2+、Zn2+ の分析
       ろ液を2~3分煮沸した。ろ過し、ろ液にフェノールフタレイン1滴を滴下、6mol/L NaOH を用いて溶液を塩基性にした。その後、6mol/L NaOH 2~3 mL、3% H2O2水 1~2 mL を加えた。溶液をろ過し、沈殿はMn2+の確認、ろ液はZn2+の確認に用いた。
       a. 沈殿(H2MnO3):Mn2+の検出
         ろ紙上から6mol/L HNO3 5 mL、3% H2O2 1~2 mLを加え、沈殿を溶解させ、煮沸、水冷した。NaBiO3を少量加えて1~2分放置し、溶液の変化を観察した。
     
    ろ液(ZnO22-を含む):Zn2+の検出
         煮沸し、6mol/L CH3COOHを用いて中性~微アルカリ性にした。
         1mol/L K4[Fe(CN)6]を滴下し、溶液の変化を観察した。
    結果
    本実験で得られた結果を以下に示す。
    CoS、NiSの分析においては、以下の結果となった。
    表1. CoS、NiSの分析の結果
    a 溶液が濃い紫色に変化した b 溶液が緑色に変化した c アセトン層が透明な水色に変化した d 溶液が赤色に変化した
    Mn2+、Zn2+ の分析においては、以下の結果となった。
    表2. Mn2+、Zn2+ の分析の結果
    a 溶液が赤紫色に変化した b 白色沈殿が生じた
    考察
    A. CoS、NiSの分析
    以下の理由より、Co2+が検出されたと考えられる。
      この実験では、溶液が濃い紫色に変化した。これは、溶液中のCo2+がSCN‐と結合して錯イオンを作り、この錯イオンがアミルアルコール層に移動し、青色を呈する反応が起こったためだと考えられる。※
    反応式:CoCl2 + 4NH4SCN → (NH4)2[Co(SCN)4] + 2NH4Cl
    以下の理由より、Co2+が検出されたと考えられる。
      この実験では、溶液が緑色に変化した。これは、H2O2が、NaHCO3性において、Co2+を緑色化合物Na3Co(HCO3)6に酸化する反応が起こったためだと考えられる。※
    反応式:2CoCl2 + 14NaHCO3 + H2O2 → 2Na3Co(HCO3)6 +4NaCl + 2Na2CO3 + 2H2O
    以下の理由より、Co2+が検出されたと考えられる。
    この実験では、アセトン層が透明な水色に変化した。これは、溶液中のCo2+が過剰の塩素イオンと反応して、塩化物錯イオン[CoCl4]3-(青色)となったためだと考えられる。※
    反応式:Co2+ + 4Cl‐ → [CoCl4]2‐
    以下の理由より、Ni2+が検出されたと考えられる。
    この実験では、溶液が赤色に変化した。これは、ジメチルグリオキシムがNi2+と反応して、赤色沈殿を生じたためだと考えられる。※ 
    以下に、この反応の機構を示す。
    図1.ジメチルグリオキシムとNi2+の反応機構
    B. Mn2+、Zn2+ の分析
    以下の理由より、Mn2+が検出されたと考えられる。
    この実験では、溶液が赤紫色に変化した。これは下記の反応式の途中で、NaBiO3によってMn2+が酸化され、赤紫色のMnO4‐を生じたためだと考えられる。※
    反応式
    4Mn(NO3)2 + 16HNO3 + 5NaBiO3 → 2HMnO4 + 5NaNO3 + 5Bi(NO3)2 + 7H2O
    以下の理由より、Zn2+が検出されたと考えられる。
        この実験では、白色沈殿が生じた。これは、Zn2+がK4[Fe(CN)6]によって白色のZn2[Fe(CN)6]を生じたためだと考えられる。※
    反応式:Fe(CN6)4‐ + 2Zn2+ → Zn2[Fe(CN)6]
    参考文献
    ※ 石橋雅義 / 実験分析化学 / 共立出版 /1952 / P64-77
    分析化学実験 第Ⅳ族分析                             1 / 4

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