1.発話行為および遂行文とは
発話行為(speech act)とは、言葉(speech)を用いてなされる行為(act)のことである。その発話により世界を変える可能性があるものを発話行為という。
Austin(1955)は、文を真か偽かという観点からのみ問題にする論理実証主義に対し、「言語は行為である」というテーゼを提唱し、のちの発話行為論の発展に大きく寄与した。Austinは、平叙文を叙述文と遂行文に大別した。
①’Harry was the other guy. I’m Sid. Sid Arbuck.’ (*1)
②’I’m going to help you.’ She said.’ (*2)
上述の例において、①は平叙文であり文の真偽を問うことができるが、②は遂行文であり文の真偽を問うことができない。これは遂行文では、文を発すること自体がある行為の遂行を意味しているからである。上記②では、「介助」という行為を遂行している。
遂行文にとって重要なことは、どのような場合にその行為は(適切に)遂行されたと言えるか、ということである。Austinはこの条件を適切性条件と呼んだ。
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