私は学内の在宅看護学の演習において「家族には専門的な知識はないことも多いが、療養者と長い間共に過ごし生活していることから、療養者を思い支援する力は強いのではないかということ、また潜在している能力は非常に大きいのではないか」と感じた。そのため、訪問看護ステーションでの実習を通して、これらのことを実践の場で垣間見ることができれば、と思っていた。今回訪問看護に同行させていただいたS氏とS氏の自宅療養を支える妻は演習で感じたことを実証してくれた。
私が訪問に同行し、事例検討させていただいたのは、70代のS氏であった。ピック病により認知機能が低下し、ADLにおいては全面的に介助が必要なS氏を、妻が8年間自宅で療養している。訪問看護計画の妻の欄には「自分を妻と認識している間は在宅で療養させたいと望んでいる」と記載されていた。自宅で介護しようと受け入れるにあたっての心境については、非常に大きな葛藤があり、これまでの苦労も多いことだろうと思いながら訪問した。8年間の介護イコール苦労というイメージで、きっとお疲れであろうと妻の姿を想像していたのだが、実際に訪れてみると、とても介護度の大きい在宅療養者...