1936年に『エロスとアガペ』という著作を出版したスウェーデンの神学者ニグレンは、ギリシャ哲学の愛はエロスであり、エロス的な要素を含まない純粋なアガペこそが、キリスト教本来の愛であると規定し、アガペ論を論じている。本レポートにおいては、はじめにニグレンのアガペ論とはどういうものかを述べ、その後、そのアガペ論に対する批判をする。
新約聖書において、キリスト教の根本モチーフである「愛」は、すべて「アガペ」というギリシャ語によって表現されている。それ故にニグレンは、キリスト教は本質的にアガペとしての愛の宗教である、という点を真っ先に指摘し、また、アガペの性格を「神の愛にかかわる限りにおけるキリスト教の愛の観念」であるとした。アガペの4つの特徴を挙げ、ニグレンのアガペ論の内容を述べる。
1936年に『エロスとアガペ』という著作を出版したスウェーデンの神学者ニグレンは、ギリシャ哲学の愛はエロスであり、エロス的な要素を含まない純粋なアガペこそが、キリスト教本来の愛であると規定し、アガペ論を論じている。本レポートにおいては、はじめにニグレンのアガペ論とはどういうものかを述べ、その後、そのアガペ論に対する批判をする。
新約聖書において、キリスト教の根本モチーフである「愛」は、すべて「アガペ」というギリシャ語によって表現されている。それ故にニグレンは、キリスト教は本質的にアガペとしての愛の宗教である、という点を真っ先に指摘し、また、アガペの性格を「神の愛にかかわる限りにおけるキリスト教の愛の観念」であるとした。アガペの4つの特徴を挙げ、ニグレンのアガペ論の内容を述べる。
1、 ― アガペは自発的で動機づけられない ―
律法主義の社会においては、律法を守る人間は、神から愛される「義人」であり、律法を破る人間は、神から憎まれる「罪人」であった。それに対し、イエスは自分の能動性に基づいて、律法主義者の非難に屈することなく、自分が愛したいと思う人々を自発的に、積極的に愛した。神が人間...