短期記憶の範囲と保持時間
・序論(背景・実験の目的)
最近、情報処理の観点から心理学的事象を研究しようとする試みが多くなされるようになり、記憶研究はそのような動向の中心領域の1つである。
人間の記憶は、感覚記憶、短期記憶、長期記憶という3つの貯蔵庫を持ち、それらに情報を入力し、保存し、必要な情報を探し出し、出力するというシステムであると考えられている。
記憶をいくつかの貯蔵庫によって構成されるシステムと考えたとき、記憶研究が目指す方向は、各貯蔵庫がいかなる機能的特徴を持ち、それらがどのようにシステム化されているのかを明らかにすることである。
具体的には、各貯蔵庫ごとに、
貯蔵庫の情報はどのような形式で保存されるか。
保存されている情報はどのようにして他の貯蔵庫に転送されるか。
貯蔵庫内にどれほどの量の情報を、どれくらいの時間保存することができるか。
貯蔵庫内の情報はどのようにして消失、忘却されるのか。
貯蔵庫内の情報をどのように検索するのか。
といった問題に対し、1つ1つ研究を進めていかなければならない。
この実験では、短期記憶について(3)に示した問題を中心に、(4)に示す消失...