政治学の研究課程において行動論的アプローチが登場する以前は、一般に伝統的アプローチと呼ばれる手法が主であった。その代表的なものは法学的アプローチと制度論的アプローチである。前者の考え方は、国家を性格づけているものは憲法と諸法律制度であるとし、国家の法律制度や憲法の研究に焦点があてられた手法である。後者は、議会や政党政治、権力分立制度、選挙制度といった国家の統治制度に研究の焦点が当てられた手法である。このような従来の政治学は、法や政治構造、政治組織を経験主義的な立場から研究しているのであるが、既存の憲法を中心とした法体系に依存し、そこから政治的特質の描写を行い、その中で思念された諸特徴を列挙し、それらに普遍性を与えるというものであった。このような手法は人間の恣意的判断を介入させる余地を与え、科学としての政治学、つまり自然科学的科学観に基づいた政治学とはほど遠いものであった。
「政治学は科学として成り立ちうるか」という問題意識が顕在化していく過程で生まれたのが「行動論的アプローチ」という政治学の新しい研究手法である。政治学に科学性を与えるという難解なテーマに挑戦したのが、アメリカの「シ...