生物系基礎実習レポート
Ⅰ-1 アミノ酸、糖、脂質の定性と定量
Ⅰ-2 タンパク質の抽出と精製
実験実施日
Ⅰ-1 2010/07/08 Thu
Ⅰ-2 2010/07/01 Thu ~ 2010/07/07 Wed
提出日
2010/08/19 Thu
Ⅰ-1 アミノ酸、糖、脂質の定性と定量
Ⅰ.目的
様々な定性反応を通じて生体で重要な機能を有するタンパク質構成成分であるアミノ酸,糖,脂質(コレステロール)の基本的な諸性質を理解する.
Ⅱ.手順と結果
グリオキシル反応
ヒスチジン5mg/mL0.05NHCl溶液,フェニルアラニン5mg/mL0.05NHCl溶液,トリプトファン5mg/mL0.05NHCl溶液,チロシン5mg/mL0.05NHCl溶液,グリシン5mg/mL0.05NHCl溶液をそれぞれ2.0mLずつ各試験管に取り,それぞれに1.0mLの氷酢酸を加えてよく混ぜた.これに濃硫酸を静かに加えて界面での色の変化を観察した.ヒスチジン,フェニルアラニン,チロシン,グリシン溶液における界面は無色のまま変化はなかったが,トリプトファンの界面は紫色に呈色した.また,界面付近は黄色に呈色した.
キサントプロテイン反応
ヒスチジン5mg/mL0.05NHCl溶液,フェニルアラニン5mg/mL0.05NHCl溶液,トリプトファン5mg/mL0.05NHCl溶液,チロシン5mg/mL0.05NHCl溶液,グリシン5mg/mL0.05NHCl溶液をそれぞれ0.5mLずつ各試験管に取り,それぞれに0.5mLの濃硝酸を加えて加熱した.ヒスチジン,フェニルアラニン,グリシンでは無色のままで呈色は見られなかったが,トリプトファンの溶液は橙色を,チロシンの溶液は黄色を呈した.
ビアル反応
グルコース1mg/mLinH2O溶液,ガラクトース1mg/mLinH2O溶液,フルクトース1mg/mLinH2O溶液,アラビノース1mg/mLinH2O溶液,リボース1mg/mLinH2O溶液をそれぞれ1mL試験管に取り,2.5mLのビアル試薬を加えて沸騰するまで加熱した.グルコース溶液では,はじめ黄褐色だった液体が白濁した.ガラクトース溶液では,はじめ黄褐色だった液体の色が次第に薄くなり最終的に淡緑色に変化した.フルクトース溶液では,はじめ黄褐色であった液体は抹茶色に変化した.アラビノース溶液では,はじめ黄褐色であった液体の色が次第に薄くなり,次いで黄緑色に変化し,最終的に暗緑色を呈した.リボース溶液では,はじめ黄褐色であった液体の色が次第に薄くなり,次いで青緑色に変化し,最終的に暗緑色を呈した.
セリワノフ反応
グルコース1mg/mLinH2O溶液,ガラクトース1mg/mLinH2O溶液,フルクトース1mg/mLinH2O溶液,アラビノース1mg/mLinH2O溶液,リボース1mg/mLinH2O溶液を,セリワノフ試薬2.0mLにそれぞれ1.0mL滴下した.これを1min加熱したところ,グルコース溶液,ガラクトース溶液,アラビノース溶液,リボース溶液では無色のまま変化はなかったが,フルクトース溶液は加熱後桃色を呈した.
リーベルマンブルハルト反応
乾いた試験管にコレステロール溶液200μLをとり,無水酢酸‐濃硫酸混合液2.0mLを静かに加えた.加えた瞬間,透明だった溶液は白濁し,淡青色を示した.放置すると次第に淡青色が濃くなっていった.時間が経つにつれて溶液は青緑色に変化し,さらに放置すると最終的に溶液は緑色になった.
Ⅲ.原理と考察
各反応の原理は4,5,6ページにそれぞれ示した.
グリオキシル反応
原理に示した通りの反応がトリプトファン溶液で確認できた.界面周辺に紫色ではなく黄色の呈色が見られたのは,原理で示した反応が途中までしか進行しなかったか,原理で示したものとは別の反応が起こり,共役系の長さが異なる黄色を呈する物質が生成したためだと考えられる.
キサントプロテイン反応
原理に示した通りの反応が,芳香環を有するアミノ酸溶液,すなわりチロシン溶液とトリプトファン溶液で確認できた.トリプトファン溶液とチロシン溶液の呈色に微妙な違いがあったのは,生成した物質の共役系の長さや電子の局在に差異があるためだと考えられる.なお,それぞれの反応で生成する物質の構造式は原理で示したとおりである.
ビアル反応
原理に示した反応が,ペントースであるアラビノースとリボースで観察された.ガラクトース溶液,フルクトース溶液でわずかに緑色の呈色が見られたが,これはアラビノースとリボースで見られたものとは明らかに異なっていた.反応によってペントース以外の糖がオルシノールと一部反応し,ビアル反応とは異なる反応によって呈色したものと考えられる.また,試薬を共通の試験管から取り分ける際に,試験管とピペットの配置がバラバラであったため,誤ってそれぞれの試薬が混合されていた可能性がある.
セリワノフ反応
原理に示した反応が,ケトースであるフルクトースで観察されたが,呈色は色素の赤色ではなく,薄い桃であった.赤色の色素が生じたという判定には十分な変化であったが,フルクトース濃度およびレシノール濃度を上げて,溶媒を少なくすればより明晰な結果が得られると考える.
リーベルマン-ブルハルト反応
結果に示したように,連続的な共役系の変化により色が変化していく様子が見られた.反応開始直後に白濁した原因は,反応が完全に進んでおらず呈色がはっきりと判断できなかったことを考慮すると,白色の呈色ではなく他の色の呈色であった可能性がある.青色が徐々に濃くなっていったのは時間が経つにつれて徐々に反応が進んだためだと考えられる.最終的に緑色を示したのは,原理に示した暗緑色の化合物と黄色の最終化合物が混ざっていたため,目に見えた色が緑色だったと推察する.
Ⅳ.参考・引用
Ⅰ-2にまとめて記す.
Ⅴ. 感想
Ⅰ-2にまとめて記す
Ⅰ-2 タンパク質の抽出と精製
Ⅰ.目的
遺伝子工学手法を用いて大腸菌に大量発現させた組換えタンパク質の特異な性質を利用して,簡便かつ高い効率で生成する方法を理解する.
Ⅱ.手順と結果
プラスミドを構築し,IPTGを用いる手法によって調整された可溶性画分60μLを標品A(フラクション0)として分注した.また,IPTGを加える前の培養細胞をMock用に標品Cとして用いた.ニッケルアフィニティーグロマトグラフのカラムに樹脂を詰め,BufferA(5mL)でwashした.可溶性画分をカラムに入れ,通し番号を1-35まで付けたエッペンのうち1-5に1mLずつ回収した.次にBufferB(10mL)を流し,6-15に1mLずつ回収した.さらにBufferC(10mL)を流し,16-35に0.5mLずつ回収した.得られた0-35のフラクションをテキストに記載されている通りに96wellプレートに分注し,それぞれにBradford試薬を180mLずつ加えた.検量線を描くために,1mg/mL BSAからそれぞれ0,25,50,100,200μg/mLに調製して,試料同様にテキストに従って96wellプレートに入れた.調整の詳細は以下のとおりである.まず1mg/mLのBSA40μLに精製水160μLを加えて200μg/mLのBSA溶液を200μL調製し,このうち100μLに精製水100μLを加えて100μg/mLのBSA溶液を調製した.以下同様に精製水とBSA溶液を1:1で混合し,必要な濃度のBSA溶液を調製した.試料を分注した一部のwellにおいて青色の呈色が見られた.また黄褐色の呈色をするものも観察できた.96wellプレートを5分間放置したのち,OD595測定を行った.結果を表Ⅰ-2.1として示す(感熱紙に印刷された結果が不明瞭になってしまっていたため,検量線作成時に写しておいた表を付した).また作成した検量線をグラフⅠ-2.1として,また結果のグラフをグラフⅠ-2.2として以下に示す.これらの結果から,フラクション17を標品Bとした.ただし,検量線は最小二乗法による回帰式をもとに作成した.
次に,標品A,標品B,標品Cそれぞれ60μLにサンプルBuffer1.2μLを入れてエッペンのキャップを閉め,65℃の湯浴で15分間加熱し,タンパク質を変性させた.次にSDS-PAGEを行うための泳動槽の組み立てを行い,SDS泳動Bufferを満たした後,平板にウェルの位置をマジックで印した.サンプルを左からマーカー,標品C,標品B,標品Aの順にアプライし,右側半分のwellにも同様にアプライした.これを200Vconstantで40分間泳動した.ゲルを取り出し,乾かないように精製水をかけながら半分に押し切った.一方はCBB染色液に浸し,10分間撹拌した.その後2回蒸留水でそれぞれ5分間washした.脱色液につけて処理をしたゲルのコピーを図Ⅰ-2.1として付した.他方はウェスタンブロッティング用のBufferにつけておいた.ろ紙4枚,メンブレン,ゲル,ろ紙2枚の順に,空気が入らないようにBufferでぬらしながら転写装置に重ね,200mAconstantで40分間ブロッティングを行った.ブロッティングが完了したメンブレンをPBSでwashし,3%スキムミルクに浸けて30分間撹拌した.これをPBSで5分間×3回washし,ペルオキシダーゼ標識されたHis-Tag抗体(25mU/mL)を加え,4℃で一晩撹拌した.メンブレンをPBSで5分間×2回wa...