基礎実習レポート6

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    基礎実習レポート  
    1-6 凝集沈殿法による水溶液中の金属の除去
     実験実施2010/05/13

     提出 2010/05/19
    Ⅰ.目的と概要

     PETなどの診断法の進歩に伴い、放射性医薬品の使用が、今後増加すると見込まれる状況において、放射化学は薬学の基礎として今後重要な科目となっている。実際に、RIを用いた実習が難しいため、non-RIでの実験により、非密封RIの取り扱いの基礎である凝集沈殿法を学ぶ。
    Ⅱ.原理

     テキストに準ずる。
    Ⅲ.実験手順

    ピペットマンを用いて亜鉛を含むサンプル溶液0.500mLを試験管にとり、サンプル1とした。ビーカーに用意されたサンプル溶液100mLに、硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム溶液および塩化バリウム溶液を各0.200mLピペットマンで加え、塩化アンモニウムを0.1995g加えて、よくかき混ぜた。これをホットプレート上で、ガラス棒でときどきかき混ぜながら加熱した。少し湯気が出てきたところで、ガラス棒でかき混ぜながらアンモニア水(1:1)をピペットマンで0.500mLずつ1.500mL加え、pHを約9にした。溶液のpHはpH試験紙でチェックした。これを吹きこぼれないようにときどきホットプレートからおろしながら20分間加熱した。ビーカーをホットプレートから下ろし、10分間静置した。沈殿が沈降していることを確認して溶液をろ過した後、メスシリンダーを用いてろ液に蒸留水を加えて100.0mLにした。そのろ液0.500mLを試験管にとり、サンプル2とした。残ったろ液に塩酸(3mol/L)を1.500mL加え酸性に戻した。ろ液に硫酸鉄(Ⅲ)アンモニウム溶液および塩化バリウム溶液を各0.200mLピペットマンで加え、よくかき混ぜた。これをホットプレート上でガラス棒でかき混ぜながら加熱した。少し湯気が出てきたところで、ガラス棒でかき混ぜながらアンモニア水(1:1)をピペットマンで0.500mLずつ1.000mL加え、pHを約9にした。溶液のpHはpH試験紙でチェックした。これを吹きこぼれないようにときどきホットプレートからおろしながら20分間加熱した。ビーカーをホットプレートから下ろし、10分間静置した。沈殿が沈降していることを確認して溶液をろ過した後、メスシリンダーを用いてろ液に蒸留水を加えて100.0mLにした。そのろ液0.500mLを試験管にとり、サンプル3とした。各サンプルをサンプルチューブに移し、蒸留水を加えて全量を10.00mLとした。各サンプル中の亜鉛イオン濃度を、原子吸光法によって測定した。
    Ⅳ.結果

     原子吸光法による測定で得られた値を以下の【表1】に示す。また、測定の基準となる標準溶液についての検量線の結果を【表2】として付した。なお、【表2】において、検量線の近似は下に示されるように二次式の近似を用いた。
    【表1】各サンプルの吸光度と濃度の測定値

     
    【表2】測定における標準溶液の吸光度の測定値と検量線
    Ⅴ.考察

    得られた結果から共沈率を求める。
     今回の実験は、放射線源を用いない実験であったが亜鉛イオンの濃度の測定結果を用いて、放射線源を用いた場合と同様に共沈率を求めることができる。まずdps(dpm)という放射能の単位、cps(cpm)という放射能の計数値の単位、および今回亜鉛イオンの濃度測定に用いた濃度単位の関係について考察する。
     cps(cpm)とは、液体シンチレーションカウンターで測定される放射能の計数値であり、放射能の単位であるdps(dpm)には計数効率を用いる。ここで計数効率をδとおくと沈殿の放射能とδの関係は①で表わされる。

    またδは以下のようにして求めることができる。

    実際の値を用いて計数効率δを求めると以下のようになる。

    一方放射能は一秒当たりの放射性元素の減少数で定義される。すなわち②式が成立する。ここでNは放射性元素の数、λを崩壊定数、λNを放射能、NAをアヴォガドロ数、Cを溶液中に含まれる粒子の物質量とする。
    ②においてt=1[sec],λ=const.よりNtはN0に比例する。②③より、放射能の単位であるdpsと濃度単位の間には比例式が成り立つのでその比例定数をαとおくと④式が成立する。

    ただし④が成立するためには、サンプリングの際の溶液体積がサンプル1からサンプル3まですべて同じであることが必要である。
    結果と④式より、共沈率をX、サンプルの初めの放射能をRをおくと、

    一回目の操作で沈殿した亜鉛イオンの物質量C1[ppm]=RX
    二回目の操作で沈殿した亜鉛イオンの物質量C2[ppm]=R(1-X)X
    二回目の沈殿操作の必要性について
     非常に小さい物質量の金属を扱うこと、共沈率がX=0.9630と大きい(1に近い)値であることを考えると、二回目の沈殿操作で沈殿する金属の量はごくわずかであり除去操作は必ずしも必要ではないと判断できる。しかし共沈率は1ではないため、理論上複数回操作を行っても完全に金属を取り除くことは不可能である。
     ゆえに上記のことは、今回の実験のようにごく少量の金属を扱う場合にのみ言え、より多量の金属を含むサンプルを扱う場合には複数回の操作を行う必要性があると考える。複数回行うことで、全てを取り除くことは不可能だとしても、より多くを取り除く事が出来る。
    Ⅵ.参考

    “放射線の基礎”2010/05/17参照http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/nuric/docs/RI1.html

    “スライドタイトルなし” http://www.rs.noda.tus.ac.jp/~nakailab/lectureE2.pdf
    2010/05/17参照

     斎藤寛ほか編,パートナー分析化学Ⅰ,南江堂,2007,299p
    以上

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