『ロマン主義とは何か、またその担い手たちはどういう意味でロマン主義的なのかをそれぞれ述べよ。』
今から200年ほど前にヨーロッパで起こったロマン主義とはいかなるものであったか。また、ロマン主義を反映したといわれる文学者たちの作風にみられる普遍的あるいは特殊的な特徴とは何であろうか。 本稿では、ロマン主義の定義付けを、時代考証を含めながら行い、次に個々の作家たちの作品、特にウィリアム・ワーズワス(William Wordsworth, 1770-1850)と、その流れを汲む作家達に焦点を当てながら「ロマン主義的芸風とは何か」というテーマを具体的に叙していきたい。 ロマン主義とは、勃興した市民階級と激動するヨーロッパ社会の精神が表出したものである。語源は中世の「ロマンス(恋愛や冒険物語)」であるが、次第に自然に対する叙情的な感覚をも指すようになった。 このロマン主義は18世紀後半から19世紀初頭のヨーロッパ全体で起こった芸術運動であり、新古典主義や合理主義への反動として起こった。18世紀の欧州を支配していたのは啓蒙主義であり、それは理性を偏重し、伝統を軽んじる傾向があったため、そういった...