脊椎すべり症
1.概念
椎体が下位の椎体に対してずれている状態。L5で82.1%、L4で11.3%、L3で0.5%、L2で0.3%の割合で発症する。
2.原因
一般に解剖学的に後方の椎間関節が正常であれば、上位椎体の下関節突起は下位椎体の上関節突起が邪魔になり前方にすべることはない。しかし、この上関節突起が欠損していたり、形成不全であったり、さらに椎間関節の前傾角度が大きかったりすると、上位推体は前方にずれることがある。また、関節突起間部が異常に長かったり、この部分が離断していれば同様にすべりの原因になる。
3.分類
関節突起間に分離を伴う分離すべり症と、この部分に分離を伴わないが堆体が前方にすべっている無分離すべり症がある。
・分離すべり症
関節突起間が離断され、椎体、上関節突起、横突起が一塊となって前方にずれ、棘突起、椎弓、下関節突起がもとのままの位置に残っている状態。
・無分離すべり症
関節突起間部に分離がないのに上位椎体が下位椎体に対して前方にずれている状態を無分離すべり症という。
4.症状
主な症状として腰痛があげられるが、その理由は椎弓の異常可動によって腰神経後枝内側枝が刺激されるためとされている。しかし、すべりがⅩ線所見として発見されたからといって、患者が訴えている腰痛がすべりそのものと直接関係があるとは限らない。
このことはすべりが認められる患者でも、保存療法や日常生活の姿勢に注意するよう指導しただけでほとんどの腰痛が改善されることから理解できる。しかし、下位腰椎が前方にずれていると代償的にそれより上位の腰椎が後方にそりかえるため腸腰筋が作用して骨盤の後方をあげる結果となるので、腰推前考は増強される。この結果、ハムストリングスは緊張して腰痛や下肢の後方に違和感を訴えるようになる。
5.治療
1)保存療法
すべり症では腰椎前弯が強い患者が多く、そのため椎間関節や椎間板に負担がかかりやすく、これを除去するような治療が重要である。
(1)経過の観察と安静
急性腰痛には安静が最も有効である。労働や運動の休止は2週間を目安とする。
(2)装具療法
小児の疲労骨折には治癒を期待して使用させる。コルセットの連続的長期間使用は体 幹筋力低下をもたらし治療の逆効果になるので、労働や運動時だけの制限使用が望まし い。
(3)筋力・姿勢訓練
腰椎の前弯を減少させる目的で、受動的および能動的屈曲訓練を行い同時に腹筋筋力訓練を施行させる。背筋筋力訓練は症状を誘発するので、注意して施行するかまたは施行しない。立位での腰椎前弯を減少させるために姿勢訓練を指導する。
(4)日常生活指尊
日常生活のなかで腰椎前弯増強姿勢を避けることが症状の再発防止に必要である。
2)観血的療法
保存療法に効果が見られない場合、手術適応になる。すべり症は本質的に不安定であるので脊椎固定術を行う。後側方固定術と前方固定術が一般的である。
(1)後側方固定術
最も多くなされている方法である。必要に応じた神経根の除圧後、プレートやロツドを用い棘突起および椎弓を後方から固定する。また、分離された関節突起に腸骨骨移植を行うことがある。
(2)前方固定術
経腹膜または腹膜外経路で進入し、椎間板全摘後に腸骨骨移植を施行する。強固な脊椎固定術が得られるが脊柱管内操作ができない。
参考文献
・東博彦 他:整形外科サブノート、南江堂、2001年
・片田重彦 他:整形外科手術後療法ハンドブック、南江堂、2001年
・細田多恵:理学療法ハンドブック第1・2・3巻、協同医書出版社、2001年
・監修 国分正一、鳥巣岳彦:標準整形外科学、第10版2刷、医学書院 2008年
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