ベッカーのラベリング理論

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    社会

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    ベッカーのラベリング理論(レイベリング理論)について述べよ。
     ハワード・S・ベッカー(1928~)のラベリング理論は、『アウトサイダーズ』という古典的名著によって展開され、従来の社会学が取り上げてきた逸脱行為とは異なる観点を提供している。従来は、規則に反した人々が問題とされ、どのような社会要因や環境が彼らの逸脱行為を導いたかが重要視されてきた。

     ベッカーによれば、こうした観点は、逸脱が社会によって生み出されるという事実を無視しているという。ベッカーにとって、逸脱とは人間の行為の性質ではなく、社会集団がこれをすれば逸脱となるような規則を設け、それを特定の人々に適用することで、つまりレッテルをはることで作り上げられるものである。すなわち、(1)逸脱は規制の違反によって生じるのではなく、他者の評価や反応が必要である、(2)社会によって作り出される規則は、普遍的・絶対的なものではない、という考え方にもとづいている。逸脱とは、ある社会的集団とその集団から規則違反者として規定された人間との間の社会的交渉であると言い換えてもよいだろう。

     こうした観点からベッカーは、(a)規則への違反の有無、(b)他者による逸脱の認定の有無という二つの軸を用意し、逸脱行動の類型を示している。(以下の表を参照)
    他者による逸脱の認定・有

    他者による逸脱の認定・無

    規則への違反・有

    正真正銘の逸脱

    隠れた逸脱

    規則への違反・無

    誤って告発された行動

    同調行動
    は、正真正銘の逸脱である。

    「隠れた逸脱」は、規則を違反しているが、他者に気づかれない行動である。

    「誤って告発された行動」は、規則に違反していないにかかわらず、他者や社会から逸脱者とみなされる行動である。

    「同調行動」は、規則に違反しておらず、他者からも逸脱と認定されることもない行動である
     ベッカーはこの類型をふまえ、逸脱の生じるプロセスを分析するためのモデルを追及する。その際に、人々が逸脱へと至る具体的なプロセスを意味する「逸脱経歴」という概念を用いた。そして、そのプロセスにおいて、いかなる要因がどのように作用しているかを、その経過とともに明らかにする方法が、マリファナ常習犯などの研究から提示された「逸脱経歴研究法」である。

    ベッカーによれば、逸脱行動の原因は、同時に作用するのではなく、継続的に作用する。例えば、マリファナ常習犯は即座に常習するようになったのではない。マリファナへの関心、関心をもつように至った状況、マリファナの入手可能な状況への接近を経て、マリファナを常習的に吸引するようになったのである。逸脱行動はこのように継続的なものであり、それぞれの段階を経ている、とベッカーは結論づけ、「逸脱経歴」に応じた継続的なモデル構成の必要性を強調している。

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