乳幼児期の子供のパーソナリティーにおいてa

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    資料紹介

    資料の原本内容

    まずパーソナリティーとはどういうものかという考え方であるが、個々人が他者または自分以外の事物から受ける刺激に対して反応をするものの総体という考えもあるが、今回のレポートにおいてはより一般的に個人の心の動きや行動ということにして話をすすめることにする。また乳児とは生後0日から満1歳未満までの子をいい、幼児は、満1歳から小学校就学までの子供のことをいう。
    生まれてすぐから表れ、ある程度の期間持続する行動の個人差を気質とよび(菅原,1996)、主に人間の情動的な反応の特徴という意味で用いられてきた。そしてこれは遺伝的な影響の強い部分であると捉えられてきたが、最近では後天的な環境の刺激により変化するものだと考えられている。このように人間の性格や人格は遺伝的なものの他に乳幼児期の家庭環境や病気・怪我などの外的要因によって形成されていくといわており、このような考えかたは「相互作用説」と呼ばれている。しかし行動遺伝学によると、家庭環境は人格形成、特に気質にはほとんど影響しないといわれている。というのも家庭ごとの環境の違いとして、スポーツや勉強などに力を入れている家庭に育てばそれぞれのことがたくみになるということを除いて考えると人間の性格に影響を与えるのは家庭ごとの違いよりも家庭内での環境によるというのである。それはたとえばある子供が長男であったり、父親がいないことによって家庭内で唯一の男であったりすることのほうが性格に影響を与えるということである。つまり社会的地位や兄弟姉妹の出生順位、職業に固有したものによって形成されていく「役割的性格」である。また、前述のように気質の形成には後天的な環境が大きく寄与するということもあるが、子供の生得的な特徴もあることは実験的にも示されており、アメリカの精神医学者Thomasらは85家族136名の子供を0歳から追跡することにより、赤ちゃんの行動特徴を「活動水準」「周期性」「接近/回避」「順応性」「反応閾値」「反応強度」「気分の質」「気の散りやすさ」「注意の範囲と持続性」の9つで記述し、またいくつかのカテゴリーで特徴的なパターンを示す典型を3つ挙げ、それぞれが親の対応との関係により良い点を伸ばすことにもなれば問題を引き起こすこともあると述べている。ここで示されたような本人が持ち備えた人格に環境要因がプラスされ、人格は生活と共に徐々に形成されていくという考え、「加算的寄与説」もある。
    きょうだい関係は誕生したときから(弟妹の場合は異なるが)決まっているものであり、かつ大人ほど年齢差の無い特殊な「ナナメの」人間関係(依田,1978)といえる。先にも記述したとおり、家庭内での地位は乳幼児期のパーソナリティーに大きな影響を及ぼすもので、母親にきょうだいの中で長子に当てはまる特徴、末っ子に当てはまる特徴などを尋ねた研究(依田・深津,1963;依田・飯嶋,1981;浜崎・依田,1985)によると長子的性格には「気に入らないと黙り込む」「人前に出るのを嫌う」「親切」「自制的」「話すより聞き上手」「仕事が丁寧」「めんどうが嫌い」「ひかえめ」「遠慮がち」「自分の用を人に押し付けたり頼んだりする」「母に口答え」「几帳面」「すましや」「父にしかられる」などがあり、末っ子的性格には「おしゃべり」「父に甘える」「母に甘える」「母に告げ口」「強情」「依存的」「人まねがうまい」「食事の好き嫌いが多い」「お調子者」「嫉妬」「外で遊ぶことが好き」「知ったかぶり」「父に告げ口」「せっかち」「はきはきして朗らか」などが挙がっている。またこのようなきょうだい間での違いは日常的に長子が「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」と、本人の名前ではなくきょうだいの地位で呼ばれているときに顕著で見られたことから先に示したようにきょうだい間での地位はパーソナリティーに影響を与えているといえよう。
    家庭内における父親の役割というのはステレオタイプ的にいえばもちろん収入を担うということになるが、乳幼児のパーソナリティーに与える影響という面で見れば性役割観を子供に伝達することが挙げられる。しかし現代日本においては男女共同参画社会などの影響もあり、以前と比べこの性役割観を持つ親が減少してきている。男女平等社会を目指している日本ではあるが、男女のそれぞれが持つ長所を生かした役割を、適切な方法で伝達していくことは重要なことなのではないかと言える。また、夫婦仲による家庭の雰囲気や、祖父母の性格に伴った親の性格も同様に重要な役割を果たす。
    きょうだいや父親のほかに標準的な日本の家庭における乳幼児がかかわりを持つ身近な他社の例として、保育園や幼稚園などにおける友達が挙げられる。このような友達関係は親子関係やきょうだい関係と異なり、基本的に同等のものとの関わり合いである。友達との関わりにより発達が促されるものの例として、社会性か共感性、攻撃性のコントロール、他人の立場になって考える力など多くの事柄が挙げられている。(岡野,1995;Cicchetti & Toth,1998)
    以上のように乳幼児のパーソナリティーにおいては母親以外の人間関係が多くの要素で影響を与えているのである。(本文2140字)
    引用文献
    Cicchetti, D., & Toth, S.L. 1998 Perspectives on research and practices in developmental psychopathology. Handbook of child psychology. Fifth edition. Vol.4
    榎本弘明・安藤寿康・堀毛一也 2009 パーソナリティ心理学 有斐閣アルマ
    浜崎信行・依田 明 1985 出生順位と性格 横浜国立大学教育紀要
    岡野雅子 1995 仲間関係の発達 佐藤眞子(編) 培風館
    菅原ますみ 1996 気質 青柳 肇・杉山憲司(編著) 福村出版
    戸田まり・サトウタツヤ・伊藤美奈子 2005 サイエンス社
    依田 明・深津千賀子 1963 出生順位と性格 教育心理学研究
    依田 明・飯嶋一恵 1981 出生順位と性格 横浜国立大学教育紀要

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