学部卒業論文。評価AA。
梗概
三位一体を正統教義とするキリスト教において、プロテスタント以外の宗派は三位一体には入らないはずの聖母マリアを信仰するが、このようなマリアの存在はキリスト教正統教義の中では矛盾をしないのだろうか。またそれが、どのようにして生まれ、広まっていったのだろうか。本稿はこうした問題意識を元に、キリスト教の発展過程において聖母マリア信仰がどのように確立し、広がったのかを考察したものである。
第1章では、聖書が書き記された当時の社会で、女性がどのような存在だったのか、新約聖書及び、それ以前のユダヤ教社会に遡って考察し、新約・旧約聖書に登場する女性達とは、男性社会で虐げられていた存在ではなく、むしろ自立した存在として描かれていることを明らかにした。第2節では、正典福音書の中でイエスの母マリアはあまり取り上げられない存在であり、聖母マリア信仰とは初期のキリスト教には存在しなかったことを論じた。
第2章では、聖母マリア信仰の原型となったとされる大地母神信仰について明らかにした。第1節では、まず大地母神信仰とはどのような信仰であったかについて考察した。第2節では、ギリシア・ローマ世界において処女...