教育課程とは何かについて、その基準と編成原理、今日的課題についてまとめてください
「教育課程とは何かについて、その基準と編成原理、今日的課題についてまとめてください」
教育課程とは、カリキュラム(Curriculum)の訳語として第二次世界大戦後、今日に至るまで使用されている用語である。教育課程という用語は、日本の教育政策上の用語であり、「学校教育法規則」や「学習指導要領」によって明示された内容をさす。よって文字言語によって表記された記録物、いわゆる「書かれた文章」が教育課程である。
教育課程と類似する用語として「指導計画」というものがある。教育課程と指導計画とは、ともに学校における教育内容の実施計画のことであるが、教育法令上では教育課程とは、学校教育での各教科、道徳、特別活動の全体計画である。それに対して指導計画とは各教科別の計画、授業レベルの計画、学年単位の計画、学級単位の計画、学期計画、週間計画などといった全体計画ではない部分的な計画のことである。
これに対して、カリキュラムという用語は、より多義的かつ広義的に使用される。進歩主義的教育学者の立場では、カリキュラムは学校における学習経験の総体として把握されている。一方で、カリキュラム概念を狭義に解釈し、「書かれた文書」として解釈する客観主義の立場も存在する。ここから、教育課程概念と比較して、カリキュラム概念は広義の解釈から狭義の解釈にいたる幅広い多義性を有していることがわかる。
次に教育課程の編成について述べる。教育課程は学校教育法で定められている学校種別ごとの目的・目標を踏まえて、各学校で編成することが基本とされている。教育課程の編成権は基本的に学校長の校務掌理権の一部と考えられ、学校長がその権限を持つ。
教育課程の編成に関する規定は、大きくは学校教育法施行規則と学習指導要領、ならびに他方教育行政の組織及び運営に関する法律に分けられる。
第一に学校教育法施行規則は、実際の教科や領域構成、授業時数、単位などの基本的な基準を規定している。
第二に、教育課程の編成の基準は、文部科学大臣が告示する学習指導要領によると定められている。学習指導要領については、各学校の種別ごとに各教科で学習すべき大まかな基準を明示したものとして、教育課程編成上非常に重要である。
第三に他教行法は、第23条代5項で教育委員会の職務といし、「学校の組織編成、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関する」事務を処理し執行すると規定している。また同法第33条第1行及び49条の教育委員会は所管の学校の組織編成や教育課程などについて教育委員会規定を定めることができると規定している。
次に学習指導要領の歴史的変遷について述べる。
戦後最初の学習指導要領が出されたのは1947年である。これは同年の米国教育使節団報告書の勧告により編集された。指導要領の中でこれからの教育課程は「社会の要求」と「児童青年の生活」から考えられるべきものであり、「教育課程は、それぞれの学校で、その地域の社会生活に即して教育の目標を吟味し、その地域の児童青年の生活と考えて、これを定めるべきものである」と述べられている。
小学校では、修身・日本歴史・地理が廃止され、社会化が新設された。また、中学校では教科を必修と選択の科目で構成した。
1951年版学習指導要領の第1次改訂では、これまで「教科課程」とされていたものが、すべて「教育課程」と表現されるようになった。また、以前の9教科に代わって、4つの領域という大まかな枠組みへと再編し、領域ごとの授業時間数の配当比率を示した。また「自由研究」は「教科以外の活動」に変更された。
1958年の第2次改定では、教育課程の領域を教科、道徳、特別教育活動、学校行事等の4領域に分類した。また小・中学校に道徳が、高校に倫理社会が新設された。その結果、社会科は授業時数が減少した。一方で基礎学力の充実、科学技術教育の振興のための国語、算数、理科の授業数が増加した。第2時改定では知識の系統性重視カリキュラムが目指されたといえる。
1968年台3時改訂(小学校)では、高度経済成長が進む中、知識の系統性がいっそう重視され、教科内容の現代化、高度化が目指された。たとえば、算数では学習内容の学年の引き下げと授業時数の増加が行われた。また強化内容の現代化の名にもとに、理数系の教科で学習内容の増加が図られた。しかし、この高度化と現代化により、能力主義が過度に進行し、学校現場でも行き過ぎた競争主義が蔓延した。結果として「落ちこぼれ」の子どもを生み出したとして批判された。
そのため、1977年の第4次改訂では、人間性豊かな児童・生徒の育成、ゆとりと充実の学校生活がキーワードとなった。
本改訂の特徴は、第1に強化内容と授業時数の削減、各学校の創意工夫を生かす「ゆとりの時間」を新設したことである。
第2に教育課程の基準の弾力化である。77年版学習指導要領は子細に指導内容を規定するものではなく、各学校で弾力的に運用することを前提とした大網的な基準に近いものに変化した。たとえば、教科によって2学年まとめた目標や内容を示し、それを各年次でどう扱うかは、現場に任せたのである。さらに、1単位時間の規定ではなく、各学校において各教科等の年間授業時数を確保しつつ、児童・生徒の発達段階や学習活動の特質を考慮して適切に定めることができるようになった。
第5次改訂が行われた1989年版学習指導要領は、基本的に77年版学習指導要領の流れを受け継ぐものであるが、個性重視の原則、国際化への対応といった時代の流れに応じた内容となっている。カリキュラムの変化は小学校2学年の理科と社会を廃止し、具体的な活動や生活体験学習を重視したことがあげられる。
小・中学校において2002年度より全面実施された学習指導要領では完全学校集5日制が実施され、授業時数の縮小と教育内容の厳選が行われた。さらに「総合な学習の時間」が、「生きる力」を身につけるための時間として新設された。
以上のように、戦後日本の教育課程は学習指導要領の数次にわたる改訂を経て組み立てられてきた。
しかし、このような教育課程が、現在問題となっている「学級崩壊」の一因である可能性は否定できない。改革に伴って児童・生徒間の協議や教室内外を自由に移動しての調べ学習など、私語・徘徊との境界線が不明確な学習活動が多用されるようになったり、自主性・自発性を重視するあまり、教師が児童・生徒を厳しくしかることが稀になったりしている。そのほかにも「学習低下」問題や「学力の二極化」問題など課題が山積みしている。これらの今日的課題に対して、教育課程はこれらの課題にどう対応していくのかが期待されている。
SO527 学校教育課程論
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