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「市民的資質」の構造に基づいて、(1)「望ましいひとつの生き方」に導く授業の構造、(2)社会的事象の構成要素を伝達する授業の構造を説明しなさい。
Ⅰ.はじめに
市民的資質とは、人が社会を担う一人の人間として、人と人を結びつける力であり、人が社会を生きていくために必要な力である。教育の場において市民的資質の育成は大きな目標であり、社会科にとってもまた重要な概念である。
社会科は「社会認識形成を通して市民的資質を育成する」教科として性格づけられている。社会認識と市民的資質を別のものとして考えるかどうかは議論があるが、棚橋健治は、市民的資質は多くの要素が構造的に関係し合って成り立っており、社会認識はその一部をなしていると考える 。
棚橋によれば、市民的資質は三層に分けて考えることができ、すなわち「社会的認識力」、「社会形成力」、「生き方」である。「社会的認識力」は、事象についての価値的な知識や事象に固有な知識など基礎的な力である。「社会形成力」は知識と、知的技能を駆使して、社会において参加し意思決定する力である。そしてこれらの上位に「市民としての生き方」をあらわす「信念」が位置している...