仏陀が開祖としてインドにて広まった仏教は、後にキリスト教、イスラム教とともに世界三大宗教として知られるようになる。しかしそれぞれの神を信仰するキリスト教・イスラム教とは異なり、仏陀の教えは物事の真理を説き、倫理的な性格が強いといえる。
仏陀の思想は、当時のインドの人々が持つ輪廻思想を前提に存在する。当時のインドには人は死後何かに生まれ変わり、また死ねば再び何かに生まれ変わるという死生観が存在した。しかし人生は苦で満ちており、この終わりなき生と死のサイクル、苦の連鎖から抜け出す解脱が求められた。輪廻の原因は人の善悪の行いであり、この行いは人の欲望から生まれる。よって欲望を取り去ることが、輪廻からの脱却に結びつき、精神的自由な境地の涅槃に至ると考えられた。
そして仏陀もこの解脱を目指し出家したのである。しかし仏陀は自身の修業を通し、輪廻の根源と考えられていた欲望は更にそれを起こさせる原因が存在することを見出した。その徳望の原因とは、渇愛・癡・無明と呼ばれる根本的な生存欲である。つまり根本的な生存欲を断つことにより欲望を取り去り、行いを制し、延いては輪廻からの解脱を可能にするのである。こ...