明治の文壇の主流な流派として、自然主義とそれに相対する反自然主義が存在した。そして明治を代表する文豪の夏目漱石と森鴎外は、反自然主義作家として活躍した。つまり反自然主義文学の理解するには、自然主義文学と漱石・鴎外の作品を理解することが必要である。
日露戦争後の日本の文学界ではフランスのエミール・ゾラが最初に提唱した自然主義が主流であった。このゾラの自然主義は、人間の性格の形成は遺伝と環境的要因からなるとし、文学の中で、科学的な立場から人間社会を観察したものである。しかし、日本の作家はゾラの自然主義から科学主義ではなく 「何事をも隠さない大胆な露骨な描写」を見出した。また、日本の自然主義は写実主義の影響も強い。坪内逍遥が説いた、人生の真相をあるがままに描くことが 「作者の経験した事実をそのまま描け」と解釈された。そうして発表された島崎藤村の『破壊』、田山花袋の『布団』が、 人生の真相の「いっさいの虚構と想像力を排した実際の事実そのままの忠実な再生」として日本の自然主義を確立させたのである。その多くの作品では作者と主人公は同一化され、自身の愛欲生活などの人生の醜悪な部分の告白した。
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