共同不法行為は、連帯責任を認めることによって不法行為責任を強化するために定められた。これにより被害者の救済がはかられる。数人が、ばらばらに不法行為責任を負うだけだと、個々の不法行為によって損害もまちまちであり、そのために被害者は、損害の全部について十分に救済を受けられないおそれがある。連帯責任とすると、その不法行為の誰に対してでも全額の損害賠償責任の追及が可能となる(民432条)。この点で、個々の単独不法行為の成立の場合に比べて、被害者は、損害賠償を請求しやすくなる。
個々の単独不法行為に比べて、特に民719条が共同不法行為責任を定めたのは、普通の不法行為の要件を修正しているのではないかということが問題となる。この点については、因果関係の点で共同不法行為は責任を強化したのだという学説が有力である。すなわち、個々の不法行為における厳格な因果関係の立証が成り立たない場合であっても、不法行為が共同して行われるときには、広く不法行為の成立を認める。共同して行為をしたという以上、その個々の行為と損害との結びつきである因果関係が完全には立証されなくても、そこに因果関係があるものとみて不法行為の...