社会的入院の現状から、精神障害者が直面する社会的問題について考察
精神障害者のうち、精神疾患のために入院している人は約34万人である。このうち5年以上長期にわたり入院している人が5割近く、10年以上の人は3割ほどで実に約10万人に達している。長期入院者の中には、退院可能な状態まで回復しているにもかかわらず入院を余儀なくされている人も数多い。他の疾病であれば、回復すれば退院するのが普通であるのに、なぜ精神障害者の退院が困難なのか。理由は受け皿の不備に他ならない。本稿では、医療以外の理由で退院が叶わない「社会的入院」の現状から、精神障害者が直面している社会的問題について考察する。
偏見による地域移行の問題
全国精神障害者家族会連合会が1997年に行った調査によると、精神障害者に対して「怖い」「暗い」といったマイナスイメージが上位に並んでいた。このうち患者に直接会った人はわずか12%しかおらず、接点不足・知識不足による偏見が根強いことがうかがえる。 もう一つの精神障害者に対する偏見は「事件の加害者」としての否定的イメージである。テレビ・新聞等の報道姿勢の問題もあり、「精神障害者は何をしでかすかわからない」という漠然とした恐怖感が植え付けられ、偏見が助長さ...