被害者の同意(承諾)とは、体系上の地位をめぐって、正当行為[35条]に位置づけ、法益保護の主体である被害者が自己の法益を放棄し、その傷害に承諾又は同意を与えることである。被害者の同意は、原則として構成要件該当性の問題と位置づける形が合理的である。同意によって処罰を否定される犯罪類型の大半は、構成要件該当性が否定されるからである。被害者の同意が構成要件該当性の正否に与える影響について以下の通り類型される。
①構成要件該当性が存在しない場合。被害者の同意しないことであり、すなわちその行為が被害者の意志に反する違反行為(強姦[177条前段]、集団強姦[178条の2])になるので、被害者の同意があるという構成要件要素が認められない。被害者の同意がその構成要件該当性を失わせる場合は、「被害者の同意のないことが明示的または黙示的に構成要件の内容とされている罪」(住居侵入罪[130条]、窃盗罪[235条]など)にまで拡大解釈される。②同意の有無によって異なる犯罪が成立する場合。被害者の同意が構成要件要素とする犯罪類型として法定されており、被害者の同意がない場合(殺人罪[199条]、不同意堕胎罪[2...