婚姻の無効について論じなさい。
1. 婚姻の無効の意義
742条は、婚姻の無効事由を定めている民法総則に定める公序良俗などの無効に関する規定が婚姻に適用されるかどうかについては議論があるが、適用肯定説を採り、総則の規定は修正的に適用されるため適用排除説と結果において大差を示さないと考える。婚姻の効力の有無が当事者以外の利害関係人の身分上の地位に及ぼす影響等にも考慮して判断しなければならない(最判平成8・3・8)。
2. 婚姻無効の性質
無効原因があれば、婚姻は当然に無効と見る(多数説・判例)のだが、無効の訴えを形成の訴えと見て、無効判決ないし審判を待ってはじめて遡及的に無効となるとする学説(兼子ら)もある。
3. 婚姻の無効事由
婚姻は、以下の場合に限り、無効とするという限定主義を採用する。
⑴婚姻意思の不存在
人違いその他の事由によって当事者間に婚姻する意思がないときは、婚姻は無効である。この婚姻意思はいつ存在する必要があるかをめぐり議論がある。①婚姻届書作成時に婚姻意思があれば、届出時に意思が欠けていても婚姻は有効に成立する(婚姻届書作成時説)。②婚姻届受理...