⑴ 制度趣旨は、双務契約の各当事者は、相手方がその債務の履行を提供するまでは自分の債務の履行を拒むことができ(533条)、この権限を同時履行の抗弁権という。同時履行の抗弁権は、留置権と同じく、相手方の債務履行を確保する機能を有する。しかし、前者は双務契約の効力として生じた単なる対人的拒絶機能に過ぎないのに対し、後者はすべての人に対抗し得る独立の物権である。同時履行の抗弁権が成立するためには①当事者双方が一個の双務契約から生じた債務を負担すること。②双方の債務が共に弁済期にあること。③相手方が自らの履行またはその提供をしないで履行の請求をしたことをすべて具備することを要する。効果としては、同時履行の抗弁は相手方の請求を否認する否定的抗弁ではなく、自分の債務の履行を延期させる延期的抗弁であり、行使がなくともそれが、存在するだけで一定の効力を有する。
⑵ 解除の効果として、原状回復義務(545条1項)が生ずるが、解除とその効果である原状回復義務との結びつきの法的構成について判例の立場では、解除により契約関係が物権的遡及効を伴って消滅するため、物権変動も初めからなかったことになる。従って、目...