小原國芳の人間観・教育観
現代社会では、個々の個性を伸ばしたい、特技を活かしてトップを目指したいなど、子どもをある一面から見て判断し、その一面だけを伸ばしていけばよいと考えがちである。学問なら学問で進学するために、受験に打ち勝つための学習や、“いい会社”に就職するためのステップとして“いい大学”に入学するための学習に重点をおき、人間的な学習、精神力を鍛えるなどということは、おざなりになりがちである。小学校などでは、総合学習の時間を増やす、減らす、ゆとり教育をどうするかなど、揉めに揉め、受験戦争、受験重視などの言葉が叫ばれる時代はまだ過去のものではない。また、景気の悪化により、働き口がなくなるといわれれば、手に職をつけ、資格を取るなど、人より抜きん出ることが重視され、大切とされる風潮がある。しかし、それらの一部の学習に力を入れ、それらができていても、一方では、料理ができない、裁縫ができない、運動はほとんどせず、好きなものばかりを食べて、幼い頃から生活習慣病になってしまったり、電卓任せで計算ができなかったり、人間として生きるうえで最低限必要とされることに苦手意識があり、“諦めて、やらない”という人も増えてきている...