佛教大学英米文学科A合格レポート
『ソーントン・ワイルダー作「わが町」の主題について述べよ』
ソーントン・ワイルダー(Thornton Niven Wilder, 1897-1975)は、アメリカの劇作家・小説家である。小説家としては、「サン・ルイス・レイの橋(The Bridge of San Luis Rey,1928)」などで、2度ピューリッツァー賞を受賞した経歴を持つ。そして劇作家としてもアメリカ演劇史に残る代表的劇作家の一人である。彼の作風は、1920-30年代の現実的な問題から一歩はなれたところに身をおいて、人間存在の本質に関する普遍的なテーマを追求し続けたという特徴がある。
そんな彼の「わが町(Our Town,1938)」は、舞台としては通常とは異なった手法を用いている。ニューハンプシャー州のグローヴァーズ・コーナーズという架空の平凡な田舎町の人々の生涯という素材を使い、人間の生命の永続性を表現しようとした作品である。特徴としては、簡単な道具以外はほとんど裸の舞台で、進行係(舞台監督)が自由に時の流れを中断して登場人物を動かすという、当時の舞台としては型破りな手法を用いて、時間と空間の無限性を暗示し...