《映画『シックスセンス』の転移》
1.緒論
この論文では、M・ナイト・シャラマン監督の映画『シックスセンス』の心理カウンセラーとその患者である少年の転移を考察した。この映画を選んだのは本映画が転移の分かりやすい例であるということに加え、カウンセラーの治療を通し、患者が精神的に救われるというエピソードが『シックスセンス』を単なるサイコ・ホラーとしてだけでなく、治療者と患者の交流の物語としても成り立たせ、高い評価を得ているからである。
なお転移とは「精神分析において、無意識の欲望が、一定の型の対象関係のうちで、特に分析的関係の枠内で、ある種の対象に関して現実化される過程をさしている」(1)とあり、『シックスセンス』でのマルコムと少年がこの定義に当てはまることを前提にして、マルコムと少年の転移を考察していく。それにあたり、以下の本論でマルコムが行った治療を5回のカウンセリング別に分析し、結論において全体のまとめを行う。
(1)『精神分析用語辞典』J.ラプランシェ/J.ポンタリス みすず社 p.332
2.本論
治療1
心理カウンセラーのマルコムがコール少年の治療に実質的に臨むまで...