《キリスト教から見る十九世紀アメリカ文学》
緒論
十九世紀のアメリカにおいては、国家体制を急速に整え始めた時期であったため、それに伴って当時の人々が精神的な不安に陥りやすい傾向にあったことは、ことさら強調するまでもない事と思われる。
そのような急変する社会において、普遍的な心の拠り所であったはずの宗教は依然地位を保ってはいたが、もはや絶対的な価値観を保障するものではなく、内部ではプロテスタントへの異論が持ち上がりつつあった。
しかし、このような社会の風潮に加えて、19世紀は市場主義経済の発達の影響下に文学を芸術と見なす傾向が生まれたため、本論文に取り上げるホーソーン・ポー・メルヴィルは作品に商品としての付加価値を加えなければならなかっただけでなく、従来の価値基準であったプロテスタンティズムに対し、どのような姿勢を取るかを作品によって示す必要があった。
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