《炭素十四年代測定による縄文住居・集落研究に関する議論》

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    炭素十四年代測定による縄文住居・集落研究に関する議論に関し、初めに小林の見解を以下に述べ、続いて他の論者の見解を述べたい。「縄文社会研究の新視点―炭素14年代測定の利用―」において小林は、考古学的方法による復元のみでは、先史社会の実年代を復元することはできないため、相対的な編年の定まった考古学的事象に対してもAMS14C年代測定を行い、考古学的問題を復元して行く努力が必要であるとする。
    特に炭素14年代の精緻化を初めとして土器編年以外の時間軸の設定が現実味を帯びてきたことと、土器編年の欠点も見出されるようになったことから、必ずしも土器編年による相対時間が無二の時間的単位ではないという認識が現れてきた。だが炭素十四年代測定の精度が高まりより正確に、簡便になったとしても、土器編年が不要になるということではない。少なくとも旧来のデータについては土器型式土器から得られる状況的情報と比較できる、もう一つの座標軸が得られることは歓迎すべきであるとする。今後年代測定の確度を上げるなど検証作業を継続していくこと等を通して、土器の時間情報を中心にしたライフサイクルモデルにAMSによる年代測定という新しい要素を取り入れることができるのではないかと期待する。これに対し早山は小林が較正曲線の示す十年ごとの周期は、それよりも小さな実際の周期と同一視することは後に大きな矛盾を生み、修正の必要が出てくるのではないかと指摘する。これに対し小林は歴博の研究グループでも日本産樹木の年輪資料を5年ごとに検討している事、また山形大学のグループも1年ごとに年輪の炭素年代測定をしており、較正曲線の精度を高める研究が成実されていると述べた。またこれを補正し村木が単に資料の年代測定をすればよいというわけではなく、資料の来歴を発掘調査または整理作業で明らかにしなければならない、つまり理化学分析結果の批判をするためには評価のためのデータが必要であるとした。また、そうした分析結果を統合して見えてくるものもあるのではないかとする。さらに、一つの分析法ではできない遺跡の成果をどう組み合わせて解いていくのか、というノウハウの構築が不十分で、各種理化学的分析の複合が必要であり、これらを積み重ねた上に新たに取り組むべき課題が見られると述べた。また旧来のデータも土器形式を介在させて暦年代、実年代と対比させていくべきであると述べている。土器形式編年と炭素14年代は併用することで初めて有効な年代観を得ることができるのである。土器型式研究を代表する各井は小林の方法論ないし認識を「型式学的分析が優先している」としているが、そもそも形式と層位のどちらかが優先するという議論が誤っている。層位的出土状況が型式的な先後関係と矛盾する場合には双方からのクロスチェックが必要である。従って各井のいう考古学の時間が「層位の認識可能な時間が考古学の時間」という言い方には「型式的な分析または層位的方法を用いた考古学者が」という主語を置くべきである。さらに「自然の流れに基づく時間ではありえない」との発言には修正が必要である。なぜなら例えばある集落の廃絶順序と廃棄異物の製作順序を時間的に位置づける場合は土器としての時間と、集落内での時間とにおいて自然時間へとフィードバックされて理解されなくては人間の行為として復元を要求することができないはずだからである。従って炭素14年代測定の結果を土器研究者が積極的に検証し、適応していく必要があると小林は指摘する。

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    『考古学と関連科学B』レポート

    《炭素十四年代測定による

    縄文住居・集落研究に関する議論》
    《炭素十四年代測定による縄文住居・集落研究に関する議論》

      

      炭素十四年代測定による縄文住居・集落研究に関する議論に関し、初めに小林の見解を以下に述べ、続いて他の論者の見解を述べたい。「縄文社会研究の新視点―炭素14年代測定の利用―」において小林は、考古学的方法による復元のみでは、先史社会の実年代を復元することはできないため、相対的な編年の定まった考古学的事象に対してもAMS14C年代測定を行い、考古学的問題を復元して行く努力が必要であるとする。

    特に炭素14年代の精緻化を初めとして土器編年以外の時間軸の設定が現実味を帯びてきたことと、土器編年の欠点も見出されるようになったことから、必ずしも土器編年による相対時間が無二の時間的単位ではないという認識が現れてきた。だが炭素十四年代測定の精度が高まりより正確に、簡便になったとしても、土器編年が不要になるということではない。少なくとも旧来のデータについては土器型式土器から得られる状況的情報と比較できる、もう一つの座標軸が得られることは歓...

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