2002年5月8日、中国・瀋陽の日本総領事館に亡命を求めて駆け込んだ北朝鮮出身者の一家5名が中国当局に拘束された事件には、これまで日本がとってきた亡命者・難民受け入れのあり方が限界に達していることを、国際社会に強く印象づけました。スペインや米国の総領事館が、北朝鮮出身者に庇護を与えたのと対照的に、副総領事をはじめ日本総領事館の職員たちは、侵入した中国武装官憲に 然とした態度をとることができず、亡命を希望した一家5名を守ることができなかったのです。
なぜこのようなことになったのでしょうか。在外公館への亡命者を人道的に処遇する方針が確立されていれば、総領事館の職員たちは中国官憲に対してもっと毅然とした態度をとることができたでしょう。しかし、実際には、こうした亡命者に対する人道的処遇や保護に向けての方針はまったくありませんでした。そのかわりに存在していたのは「不審者は一切敷地内に入れない」とする警備方針でした。総領事館の職員たちの消極的な態度の背景には、亡命者・難民排除の方針があったのです。
もちろん、北朝鮮から脱出してきた5人の市民は中国に逃げていたのですから、彼らを保護する責任は、ま...