精神保健における個別課題の取り組みについて
今回私は、ターミナルケアにおける個別的取り組みについて考察し、述べる。
ターミナルケア、または、ホスピスケアとも言う。ターミナルケアの目的は一言でいえば、終末期において生命の質を尊重するところにある。なぜ、終末期医療において生命の質が問題になるのかというと、近年医療技術の進歩により、生命の量、すなわち人間の生物的生命は延命・救命できるようになったが、精神的な満足感や充実感をもって死を迎えられなくなってきたという事情による。俗に「スパゲティ症候群」などといわれるのがそれである。鼻腔、口、尿道など人間の腔部に管を入れられ、頭部や胸部にはコードが接着され、モニターによって監視されて「生きる」のではなく人工的に「生かされている」ことへの疑問が、患者や家族から提出された。このような状況のなかで、生命の量ばかりでなく生命の質も考えてほしいと医療を受ける側の人たちが叫び始めたのである。こうした背景があって、生命の質が保障され、人生の終末にあたって、まさに有終の美を迎えられるような医療へのニーズが高まり、ターミナルケアが脚光を浴び始めたのである。 ...