中学校一年生の三学期に学習されている文学教材「トロッコ」(芥川龍之介)を、詳細に教材分析し、その構造や工夫を明らかにしなさい。
『トロッコ』は、現在の良平が幼少の頃の自分の思い出を回想することで、現在の自分との状況と重ねあわせている構造になっている。つまり、現在の良平の状況が「その時の彼」と同じ状況にあり、「その時」の良平の心情変化を読み取ることと、現在の良平の心情を考えさせられることにこの物語の主題があると考えられる。
現在の良平が思い出している「そのとき」とはどの時点だったのか、どのような状況だったのか、どのような気持ちだったのかなどを、文章の構造や工夫を意識しながら読み解いていきたい。
この作品の意味段落は、冒頭の導入の部分、一度目のトロッコ体験、二度目のトロッコ体験、現在の良平の心情の四つの段落に分けることができる。また、一度目の体験の後に、現在の良平の回想を登場させており、二度目の体験のあとにも、現在の良平の回想を登場させているという構想の一致が見られることにも気付かされる。
冒頭の部分では、状況設定と良平のトロッコへの憧れが述べられている。良平の視点によるトロッコや...