①上代、中古、中世、近世の文学の特質を、それぞれの時代の特性をふまえつつ、下記の諸作品を例にして具体的に説明せよ。
〈古事記・万葉集・古今集・女流日記(女性によって書かれた日記)・源氏物語・平家物語・徒然草・近世小説〉
【上代】
上代とは、都が大和(奈良)から平安京(京都)へ遷都されるまでの時代である。日本は、遣隋使や遣唐使により、漢字・漢籍・佛教などの文化の面でも多大の影響を受けることとなった。文化的所産を口から口と伝えていく口誦や語りに頼っていた口承文化から、文字による伝達・保存が可能な記載文学が誕生することとなったのである。その代表的な作品として、『古事記』が挙げられる。『古事記』は、現存する最古の書である。語り部の稗田阿礼が語る神話・伝承を、太安万侶が筆録したもので、国内の思想統一をねらいとし、神話、伝承を重視した文学性豊かな史書である。上巻は神話、中・下巻に初代神武天皇から三三代推古天皇までの事跡を記している。序文は漢文で書かれているが、それ以外の部分は、漢字の音と訓とを交ぜあわせた変体漢文である、特に人名や歌などは一字一音の「万葉仮名」で書かれたものとなっている。
また...