2011年6月提出のレポートです。
以下、教授からのコメント。
学力低下の問題を考える際には、ゆとり教育との関係を視野に入れることは重要ですが、学力かゆとりかといった二項対立の図式では語れないことを念頭に置くことが求められます。
ゆとり教育だけが学力低下の原因ではないからです。
その際に、テキストにある学力論争の4分類をもう少し参考にするとよいでしょう。また、学習の差異は学習意欲の差異(インセンティブ・ディバイド)が大きいことも考えあわせていくことが必要です。
学力低下とは何かを明らかにし、社会階層のような社会的不平等と学力がどのような関わりをもつのかについて述べてください。
⇒「学力低下」が日本を脅かす問題として叫ばれ始めたのは最近のことではない。予てより様々な形で繰り返されてきたこの議論であるが、昨今展開されている学力低下への議論は今日までのそれとはやや異なるように思われる。大学生の学力低下は、大学全入時代と呼ばれる今、以前では大学に入ることができなかった層でも大学へ入学することが可能となったことによる大学の大衆化が原因であるとされている。ある意味では高等教育機関である大学への入学者の増加は、国民全体の教育水準の上昇を示しているということができ、仮に大学での教育がうまく機能せずとも、日本の高校以下の教育は常に高水準であり世界でもトップクラスであるので、大学での多少の機能不全もやり過ごされてきたのである。
しかし、今日議論されている学力低下の内容は、新しい世代の学力が前の世代の学力に及ばない、縮小再生産の過程の進行を指摘したものである。この指摘の根本にあるのは、「学ぶ」、「勉強する」ということに対する価値付けの低下である。一部の大学におい...