中央大学法学部通信教育課程 刑法2 第1課題 B評価合格レポート
刑法2 暴行によらない傷害
体調不良に陥らせる意思を持った上で大音量の騒音を連日連夜鳴らし続けその結果精神障害を患わせたことについて暴行によらない傷害が成立するかが問題となる。
まず、傷害罪(204条)の意義については、生理機能の毀損を傷害とする生理機能障害説と身体の完全性の侵害を傷害とする完全性侵害説の対立がある。両説の差異は頭髪や特別に蓄えたひげなどの切断をも傷害に含むとすることにおいて現れる。判例は頭髪切断などの外見に変更を加える行為は暴行罪の限度で処罰すれば足りるとして生理機能障害説をとっている(大判明治45・7・4刑録18・896)。軽度の外貌変更行為を傷害に含めないことは妥当であるが、外貌の重大な不良変更によって被害者の生活機能に支障をきたすような場合であれば暴行では不十分であり傷害と解するべきである。従って、生理機能と生活機能を傷害罪の保護法益と解する両説の折衷説が妥当である。
傷害罪は身体に対する罪であって耳鳴り症や睡眠障害など精神的機能に障害を加える行為を傷害罪に含めるべきではないという問題もあるが、折衷説によれば精神機能への障害でも生活機能を害する程度...
<参考文献>
・西田典之 他 「ジュリスト増刊 刑法の争点」有斐閣 2007年
・斉藤信治 「刑法各論」 有斐閣 2009年