本資料は、八洲学園大学(図書館サービス論)の最終試験課題にて、優の評価を得たものです。内容は、地域社会における公共図書館の意義、役割、課題を論じています。参考文献は、書籍で13冊、WEBより計6点の資料を参考にしています。図書館学にご興味のある方は、無償公開しております『中小都市における公共図書館の運営』~その意義と影響~をご参照ください。また、ホームライブラリーの現状と課題に関しては、『大都市公共図書館の盲点と衰退』にて、大阪市立中央図書館を題材に詳細に論じています。尚、児童サービス論におけるブックサービスや読み聞かせに関する資料も別途掲載しています。いずれの資料も、優の成績を得たものです。
はじめに
筆者が普段身を置いているビジネスの世界では、「現場をよく観察しろ、顧客のことを顧客以上に知れ」ということがよく言われる。そして実際にその言葉通り、コンサルティングを通じた顧客やその職場の潜在的な課題の抽出から、新しい商品の企画や改善策が生まれている。大抵の顧客は、調査後の調査報告書を見ると驚くか赤面する。こちらが提示する改善策についてではなく、職場環境の分析結果に驚く、あるいは赤面するのだ。つまり、普段目にしている自身の職場について、分かっているようでいて、実は何も分かっていないのである。「それが分かっていたら対策を立てたのに」というのが契約終了後の顧客の声であり、「時すでに遅し」というのが本音である。
このことは、地域と地域住民の関係にも当てはまるのではないだろうか。普段生活する地域社会について全く知らない、あるいは、知っているふりをしている。さらには、関心すらないという人も結構多いのではないだろうか。統一地方選挙における投票率の低さを考えれば、それは明らかな事実である。(1)とはいえ、投票の大切さを説いたところで、人が行動を起こすとは思えない。地域社会の現状を知らなけ...