本レポートでは、公共図書館の意義と役割について論じています。本論では、従来の公共図書館の意義を確認した上で、「情報社会」、「生涯学習社会」という二つの側面から公共図書館の役割や意義について論じています。無償公開しております『中小都市における公共図書館の運営』、『日野市立図書館の、日本図書館史における意義』、等も御覧いただければ、さらに理解が深まると思います。また、有料になりますが『公共図書館の存在意義と使命~経営的視点から考察する』においては、経営的側面から公共図書館の意義について論じています。最後に、現代の公共図書館(ホームライブラリー)が抱える問題や課題については、『大都市公共図書館の盲点と衰退』において、大阪市立中央図書館を題材に詳細に論じています。
はじめに
生涯学習が必要とされる背景は人により異なるが、それは現代に生きる全ての市民にとって必要不可欠なことである。それは人生80年時代を迎え、定年後の長い人生を充実させるためであったり、あるいは科学技術の発展に伴う社会の急激な変化に自分の知識や技術を適応させるためであったりと、理由は様々である。現代とは、常に学習して自己を革新させなければ、生きる目的を見失ったり、世界の流れに取り残されたりする時代なのである。(1)そして何かを学ぶということは、外部から何かしらの情報を取得し、それを知識として自分の中に取り込むことである。
では、そもそも情報とはどうすれば手に入るのか。どこで手にいれることができるのか。どれが正しい情報なのか。どう活用すればいいのか。情報化社会において、このような問いかけは当然の疑問である。あるいは人によっては、やみくもに目の前の情報に手を出して、誤った方向に進んでいるかもしれない。とにかく、それくらい多種多様なメディアや膨大な情報が我々の暮らしを取り囲んでいるのだ。
公共図書館の役割とは、これら市民の疑問を解消し、正しい情報を市民に無償で提供することである。そこ...