漢字の成立及び、表記と正書法
1.漢字の成立
漢字の発祥は中国であり、伝説によれば蒼頡という人物が、鳥の足跡をヒントに発明したとされている。しかし、実際には一人の人物が発明したというものではなく、文化の発展ととも長い時代をかけて体系的に作り上げられたものである。
現存する最古の漢字は、殷の後期のものである。亀の甲羅や獣の骨などに刻んだ文字であり、絵文字に近いものであり「甲骨文字」と呼ばれる。その後は意味や字の形が抽象化がされ、春秋戦国時代になると地方ごとに通じる漢字とそうでない漢字が出てきてしまった。また、周の宣王以前の文字を「古文」という。宣王の時代に古文をいっそう文字化して「大篆」が作られた。そして秦の時代に、始皇帝によって字体が小篆体に統一された。「小篆」は皇帝や官僚の使用する正式な書体とされた。小篆は『説文解字』でも主要な字体とされている。春秋戦国時代に登場した隷書は篆書を簡略化してできたものであるが、その隷書が漢時代の書体となった。そのうちに小篆体は次第に崩れて隷書体になり、隷書体が更に崩れて楷書体、行書体、草書体が生まれた。隷書とはこれより更に簡略化された字体である。さらに後漢の時代になると草書は、...