2011年度課題レポート・刑法1(総論)のものです。
題:被害者の承諾
序
明文にない違法性阻却事由として一般に承認されているものに、被害者の承諾がある。この点、犯罪不成立になる根拠を如何に考えるかについて等、様々な論点があるので考察する。
そこで本稿では、適宜関連判例を示しながら章立てて論点を考察する。以下、意義とその効果(第一章)、要件(第二章)、錯誤による承諾(第三章)、そして推定的承諾(第四章)に注目する。
第一章:被害者の承諾の意義とその法的効果
被害者の承諾とは、法益の帰属者である被害者が、自己の法益を放棄し、その侵害に承諾または同意することである(1)。
では、被害者の承諾が犯罪成立を阻却する根拠をいかに考えるべきか。
この点、承諾により構成要件該当性がなくなると考える立場がある(有力説)。しかし、条文上、承諾のないことが要求されていない犯罪もあり、これを構成要件に含めて考えるのは無理がある。
しかし、個人の処分可能な法益の侵害に承諾があるならば、これを侵害する行為からは社会的相当性が失われない場合がある。
よって、被害者の承諾は違法性阻却事由にあたると解する(通説)。
体...