「芥川龍之介の『鼻』を読み、出典と比較して論ぜよ。」
芥川龍之介は、明治二十五年(一八九五年)に生まれた作家であり、大正時代から昭和時代にかけて活躍した作家である。そして、このレポートのテーマとなる『鼻』は、夏目漱石に称賛され、芥川が作家としての道を決心することとなる作品である。この『鼻』は、『羅生門』や『芋粥』などと同じく、『今昔物語』を典拠としている作品であり、「金逆物語物」に分類される。芥川龍之介の作品は、様々な書物や歴史的な事件等から典拠しており、「今昔物語物」だけでなく、「吉利支丹物」「明治開花期物」「中国種」などに分類することが出来る。その為、吉田精一氏は、「大正時代の作家で、もっとも広く古典に接触し、多くの歴史小説を書いたのは芥川を第一とし、」と述べ、芥川が愛読していた作品についても、「当時の彼は、漱石を愛読してはいたが、むしろより以上に森鷗外の歴史的小説や翻訳小説の愛読者であった。「羅生門」なども鷗外のそれに示唆されるところがあったに相違ない。」と述べている。(参考文献二・五五二~五五五頁より引用及び参照)以上のことより、芥川龍之介は、森鷗外の作品を参考にしながら、『...