2500字程度のレポート。ジョン・ロックの「市民政府論」についての考察。フィルマーやルソーとの比較を通して、ロックにとっての政府と人民がどのようなものだったのかを論じる。途中、ロックの説の矛盾点についても少々言及した。
ロックが市民政府論で取り上げているのは政治権力の問題であるが、全体を通して、ロバート・フィルマーの理論を否定しながら話を進めていっている。ロックはまず第一章で政治権力を「所有権の規制と維持のために、死刑、したがって当然それ以下のあらゆる刑罰のついた法を作る権利であり、そうしてこのような法を執行し、また外敵に対して国を防禦するために協同体の力を用いる権利であり、しかもこれらすべてはただ公共の福祉のためにのみなされるものである」(ロック 1968,p.9)と定義している。そしてそれがどこから生まれるかといえば、フィルマーのいうように神に由来するものではなく、自然状態にある全人民の同意に由来するとし、「政治権力を正しく理解し、またその起源を尋ねるためには、われわれは、すべての人間が天然自然にはどういう状態に置かれているのかを考察しなければならない」(ロック 1968,p.10)としている。ロックのいう自然状態とは、何よりも完全に自由な状態であり、自らの信じるところにしたがって自らの行動を決め、自らの財産と身体とを自分の判断で処置することができる状態、また、同じ種、同じ級の被造物が生まれながら...