おとり捜査の適法性について
麻薬取締官Cは、身分を隠して自ら被告人Aに対して犯罪を行うように働きかけ、そのAが犯罪行為に及んでいることから、本問はいわゆる「おとり捜査」にあたる。
おとり捜査は、強制の処分を用いるわけではないことから任意捜査と解されるが、任意捜査であればいかなる方法の捜査も許容されるわけではない。ましてや、本来犯罪を防止すべき国家が犯罪の誘惑者となっており、またその犯罪を国家が訴追することから、その適法性が問題となる。
法は、「麻薬取締官及び麻薬取締員は、麻薬に関する犯罪の捜査にあたり、厚生大臣の許可を受けて、この法律の規定にかかわらず、何人からも麻薬を譲り受けることができる。」としている(麻薬及び向精神麻薬取締法58条、あへん法45条参照)。しかし、この規定は、一定の場合におとり捜査ができる旨を新たに規定したものではなく、おとり捜査の根拠規定となるものではない。従って、おとり捜査の適法性は、具体的な事案に応じ、刑事訴訟法上適法と認められる範囲内で行われたものかどうかによって判断される。
おとり捜査の適法性の要件として、必要性と相当性が要求される。学説は、多数見解が分かれているが、「犯...